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【COVID-19感染症奮闘記】

[2022.06.28]

【COVID-19感染症奮闘記】

医療法人香徳会
メイトウホスピタル 理事長
加藤公彦

 2022年1月に感染第6波が名古屋市を襲った時、名古屋市健康福祉局新型コロナウィルス感染症対策室から1本の電話が入った。「新規感染者数が増大し、入院収容して治療することが限界に達しつつある。ついては、在宅で点滴治療や中和抗体静注治療、抗ウィルス薬内服治療や訪問診療などをお願いしたい。可能でしょうか?」

 我々は、第5波が収束した2021年の秋に名東保健センター、名東区医師会や薬剤師会、訪問看護ステーション連絡協議会などといった地域内の医療資源の代表が集まって、「第6波が来た時にはどうするか?」ということを話し合っていた。

 9月初旬に菅内閣総理大臣(当時)が首相官邸からの記者会見で、「東京都を中心に医療資源が逼迫し、入院待機者も莫大な数に上り、医療崩壊の危機にあった。そんな中で、在宅医療を専門とする医療機関が中心となって在宅での酸素投与や点滴治療などを自らが感染する危険を顧みず勇敢に活躍をしてくださったことで、感染は収束に向かい、医療崩壊の危機を脱することができた」といった趣旨の公式見解を述べていた。

 その時、医療法人雄翔会理事長 佐々木淳先生と共に東京でCOVID-19感染症の在宅治療に携わった医療法人かがやき 総合在宅医療クリニック理事長 市橋亮一先生(岐阜県岐南町)が「今までは、COVID-19感染症を避けていたが、うCOVID-19感染症から逃げ切れる時代ではない。ワクチンと治療薬という武器も手に入れたので、これからは敢然とCOVID-19と闘っていく」と自身の講演で述べられていたことに刺激を受けて、心を動かされた。そうした経緯があって、名東区の医療機関・保健センター・訪問看護ステーションや薬剤師会との話し合いの中で、まずは市橋先生にご講演を頂き、在宅でのCOVID-19感染症治療のノウハウについてWEBでの講演会を開催してもらおうということになり、名東区医師会の先生方の協力を得て医療法人香徳会主催でのCOVID-19感染症の在宅での対応について講演会を開催した。

 今思えば、この講演会を端緒として、次の第6波にどのように備えるか?それぞれの職種の人たちが考えるようになり、名東区のみんなが1つになって「地域医療を守ろう」という使命感に突き動かされて準備を進めていったのである。

 そして2022年の新年を迎え、予想通りCOVID-19感染症第6波が日本中を襲った。その時が来たのである。蒙古襲来になぞえるならば、「弘安の役」にあたるのであろうか?無防備なまま迎えた第5波(文永の役)とは違って、周到に準備を進めて外来で治療をおこない、入院をさせない、重症化予防の水際対策作戦を着実に実行した。

 事前に準備した情報共有システムを通じて名東区保健センターからあがってくる重症化リスクを有するCOVID-19感染症患者情報を迅速に分析し、オンラインで直接感染症患者の診察を直ちに行う。診察結果から治療方針を決定し、情報共有システムを通じて訪問看護師・薬剤師・病院看護師・医事課職員・MSW・感染症専門医など多職種に同時に情報を発信し、意見を貰いながら治療計画を迅速に立案し実行に移していった。

 保健センターからの情報入手後約1時間で治療体制を構築し、実際の治療を行った。土日も関係なかった。「冬の嵐作戦」と名付けて1月18日から即応体制をスタートさせていったのである。

結果

 下記図表に示すような、成果であった。

(※第247回 日本内科学会東海地方会での当院発表より抜粋)

まとめ

 1月18日~6月20日までの期間で102名のCOVID-19感染症患者様に抗ウィルス薬投与及び中和抗体静注療法を行って、101名(99%)の患者様の重症化を予防し、重篤な後遺症もなく完治することができた。

終わりに

 まだまだ第7波の可能性も捨てきれない。また新しい変異株 BA.4やBA.5の感染拡大やCOVID-19ワクチンの今後の有効性についても一抹の不安が残る。

 「常在戦場」と心得て、祖母 故加藤富美子先生が活躍した昭和18年から連綿と続くこの地域を守っていくという使命感は世代を受け継いでいつまでも、忘れることなく日々精進と研鑽を積み重ねていきたい。

 

 

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