新型コロナウイルス感染症罹患後症状/Post Covid, Long Covidの特徴と対応
新型コロナウイルス感染症では多くの方が罹患しさまざまな知見が蓄えられてきました。その中で、大きな課題の一つとなっているのが新型コロナウイルス感染症罹患後症状(Post Covid/Long Covid)です。この記事では罹患後症状について現在わかっていることと、症状が現れた際の対応について新型コロナウイルス感染症診療の手引別冊罹患後症状のマネジメント編集委員会の情報1)を元に紹介します。
新型コロナウイルスの罹患後症状とは?
新型コロナウイルス罹患後症状は、Post Covid, Long Covid, Post-Acute-Covid-Syndrome (PACS)などと呼ばれています。病態についてはまだ解明されていないことが多いのが現状です。
国内・海外ともに罹患後症状の明確な定義は定まっていないのが現状です。
多くの場合、新型コロナウイルスに罹患後、感染性は完全に消えたにも関わらず、罹患後から持続する症状や罹患後一定期間経過後から新たにまたは再び発生した症状で、新型コロナウルス以外の明らかな原因がない症状全般を指します。
代表的な罹患後症状としては以下のものがあげられます1)。
- 疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛
- 咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛
- 記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ
- 嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下
また病態についてはまだ解明されていないのが現状です。
ウイルスに感染した組織への直接的な障害、微量のウイルスによる持続的な感染、感染による免疫調整不全などが可能性として考えられています1)。
新型コロナウイルス罹患後症状の特徴
罹患後症状については海外・国内ともに報告がありますが、ここでは国内の入院歴のある患者1,066例の追跡調査2)の分析結果を中心に紹介します。
この報告では調査対象世代は幅広く分布しており、重症度についても軽度から重症まで幅広く網羅されていました。
頻度の高かった罹患後症状
12ヶ月後の罹患後症状の中で特に頻度が高かった症状は以下となりました。
- 疲労感・倦怠感:13%
- 呼吸困難:9%
- 筋力低下、集中力低下:各8%
- 睡眠障害、記憶障害:各7%
- 関節痛、筋肉痛:各6%
- 咳、痰、脱毛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害:各5%
いずれの症状についても時間が経つにつれて、症状が現れる方の頻度は低下する傾向が見られました。
罹患後症状の頻度が高い傾向にあった患者さん群
また罹患後症状の頻度は、入院中に酸素が必要であった重症度の高い患者さん、気管内挿管や人工呼吸器が必要であった患者さん、女性(男性と比べて)で高い傾向にありました。
罹患後症状とワクチン接種の関係
罹患後症状とワクチン接種の関係についてはエビデンスレベルの低い研究結果が一部報告されていますが、一定した見解が得られていないとされています1)。
罹患後症状が疑われる場合の対応
上記のように罹患後症状についてはまだ解明されていないことが多いのが現状です。ここでは罹患後症状が疑われる場合の対応について紹介します。
かかりつけ医への相談
罹患後症状については症状の内容やその重症度も人によってさまざまです。もし「罹患後症状かもしれない」と感じられた場合は、かかりつけ医や主治医の先生に相談することが大切です。
罹患後症状については主治医の先生に相談する際に以下の情報をしっかりと伝えることが大切です。
- 新型コロナウイルスの発症、経過、期間、重症度
- 基礎疾患と新型コロナウイルスに関連する合併症
- 各種検査結果
- 罹患後症状の内容
- その他の感染症歴 など
罹患後症状については他のウイルス罹患後に見られる症状と重なる部分も多くあると言われています1)。
ご自身のこれまでの新型コロナウイルス以外の既往歴や健康上の悩みなども共有し、原因特定に繋げましょう。
罹患後症状に関する専門外来
現在は大学病院などで罹患後症状に特化した専門外来も開設されるようになってきました。
専門外来は、罹患後症状に知見を有する専門の先生の診療を受けることができます。
また症状や重症度に応じて、呼吸器内科、皮膚科、疼痛緩和外来などの専門外来やリハビリテーションなどを提供する医療スタッフなどとも緊密に連携し、治療を行うことが特徴です。
名古屋市においても愛知医科大学メディカルセンター新型コロナウイルス後遺症外来を開いていますので、ご興味ある方は以下のリンクをご確認いただければと思います。
愛知医科大学メディカルセンター 新型コロナウイルス後遺症外来
まとめ
以上、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状について紹介しました。記事の中でも触れましたが罹患後症状についてはまだ解明されていないことも多く、症状や重症度が多岐に渡ることから、ご自身の症状に応じた治療が必要になります。
一人で抱え込むのではなく、主治医の先生と相談したり、必要に応じて専門外来を受診しながら、症状を改善する方法を模索することが大切です。
参考情報
- 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント
- 第 86 回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料.2022.6.1