パーキンソン病のリハビリテーション
前回の記事ではパーキンソン病の姿勢改善へのリハビリテーション(前屈み姿勢に対する運動療法)について解説しました。この記事では「当院でのパーキンソン病のリハビリテーション」について詳細を説明します。
パーキンソン病は、以下の4大症状が特徴的な病気で、国の指定難病の1つに含まれています。
パーキンソン病の治療では、薬物療法と並行して運動療法の必要性が言われてきています。
当院では、2021年7月よりパーキンソン病のリハビリテーションを開始しております。外来でのリハビリテーションから開始し、2022年1月より入院でのリハビリテーションも開始となっております。
【当院のパーキンソン病リハビリテーションの特徴】
①愛知医科大学パーキンソン病総合診療センターの斎木英資先生の監修
パーキンソン病の診療において経験豊富な斎木英資先生の監修のもと、最先端の治療、リハビリテーションを提供します。
②米国のLSVT Globalの認定資格を取得したスタッフによるリハビリテーションの提供
米国でパーキンソン病の運動療法として効果が実証されているLSVT BIG®、LSVT LOUD®の認定資格を取得したスタッフによるリハビリテーションを提供します。
(2021年12月現在)
- LSVT BIG® 取得者:理学療法士 4名、作業療法士 1名
- LSVT LOUD® 取得者:言語聴覚士 3名
③その他の認定資格取得、研修受講スタッフも在籍
パーキンソン病は、前述の4大症状による2次的な障害として、関節や筋肉が硬くなったり、筋力や体力が低下することにより動きにくくなってしまう方も多くみえます。また、パーキンソン病以外にも循環器、呼吸器などに障害を抱えていらっしゃる方もみえます。
当院は、認定理学療法士(循環)、関節ファシリテーション、三学会合同標準徒手医学(運動器疾患スペシャリスト)講習会終了もしくは受講中のスタッフも在籍しており、多方面でのアプローチが可能です。
【パーキンソン病リハビリテーションを受けるには】
1.外来でのリハビリテーション
リハビリテーションの提供
実施頻度: |
目安1~2日/週、20分または40分/日 ※状態に応じてご相談させて頂きます。 |
完全予約制: | 実施後に次回の予約日時を調整致します。 |
担当制: |
|
対象者
- 医師の診察でリハビリテーションの有用性を判断された
- 本人または家族の送迎で来院できる
- 介護保険下のリハビリテーションを受けていない
- 本人や家族の協力のもと、自主訓練に取り組める
外来リハビリテーションのパンフレットはこちら(パンフレットのダウンロード)
2.入院でのリハビリテーション
基本的には、当院の地域包括ケア病棟にご入院頂き、リハビリテーションを提供させて頂く形となります。
リハビリテーションの提供
- LSVTのプログラムに準じて実施
- 60分/回、4日連続/週、4週間の計16セッション(実施前後各1日に身体検査)
- 下記に大まかなプログラム内容を提示
(!参考までに…)
当院リハビリテーション科スタッフが行っても疲労感や翌日筋肉痛が出現します。こまめな休憩や疲労・疼痛に合わせて運動方法を調整していきますが、所定のプログラム内容がございますので、それに則って実施します。
対象者
- 医師の診断でリハビリテーションの有用性を判断された
- 運動に影響のある病気がない 例:変形性関節症などによる疼痛や心臓や呼吸器などの重篤な内科疾患
- 自主的に運動に取り組める
- (就業中の方)約1か月程度休職できる
入院リハビリテーションのパンフレットはこちら(パンフレットのダウンロード)
入院中のスケジュールの一例
- 入院初日
- 入院翌日~(個別リハビリ日) ※入院1週目は火~金、入院2週目以降は月~木
- 入院翌日~(個別リハビリ以外の日) ※入院1週目は土、日、入院2週目以降は金~日
LSVT BIG®
LSVT(Lee Silverman Voice Treatment)とは、米国のRamingらが開発したパーキンソン病に特化したリハビリテーションのプログラムです。『Lee Silverman Voice Treatment』という言葉からもわかるように、元は声の大きさに焦点を当てた発声の訓練法(LSVT LOUD®)でしたが、この基本概念をもとに運動障害の改善に向けて応用した治療プログラム(LSVT BIG®;リーシルバーマン、ビッグ運動療法)も開発されました。
LSVT BIG®は、動作の速さよりも大きさに焦点を当てているという特徴があります。米国では、パーキンソン病の患者様に対して実施され、歩行や上肢のリーチ動作、日常生活動作の改善に大きな効果を上げてきました。特にパーキンソン病の軽度から中等度の方(Hoehn-Yahr重症度分類Ⅰ~Ⅲ)に対して、効果的・短期的に高い治療効果が期待できると言われています。
※Hoehn-Yahr重症度分類とは、パーキンソン病の重症度を示す指標として用いられており、下記に詳細を示します。(表1)
また、LSVT BIG®は、歩行訓練中心、自宅での訓練のみと比較して、パーキンソン病の評価として用いられているUPDRSの運動項目が改善したという報告も出ています。(図1:縦線がUPDRSの点数で下に行くほど良い結果を示し、横線は期間で4週で最も変化が大きい)
LSVT®が目指す到達目標
プログラム
・担当療法士との個別訓練
毎週月曜~木曜の連続4日間、60分/回のプログラムを実施します。
※入院第1週は月曜に身体検査、火曜からプログラム開始となります。
・患者様ご自身での自主訓練
担当療法士による個別訓練がある日は、宿題は1回/日です。下記の曜日は、20分の宿題を2回/日実施して頂きます。
入院第1週:土曜、日曜
入院第2~4週:毎週金曜~日曜
その他、プログラムとは別に、初日から訓練以外の日常生活場面で『より大きく』動くことを意識してもらえるように毎日課題を準備します。翌日に、その課題をどのように行えたか確認、フィードバックしていきます。
入院期間は4週間(入院時、退院前検査含む)を予定しておりますが、プログラム内容によっては前後することもございます。
次の記事では、パーキンソン病リハビリテーションは症状の進行を遅らせるにて、早期リハビリテーションの重要性について詳しく解説していきたいと思います。
お問い合わせ
メイトウホスピタルでは、パーキンソン病のご相談・お問い合わせを受け付けております。以下の画像リンクからご相談いただくことができます。
また、お電話・受付でもご相談いただくことができます。「パーキンソン病診断(治療)を希望」とお伝えください。
電話:052-701-7000(平日9:00~17:30、土曜日9:00~12:30)
詳細はこちらでもご案内させていただいております(パーキンソン病外来開始のお知らせ)。