中年期のタンパク質摂取が多ければ多いほど、健康寿命が延びる!?
世界中で高齢化が進む中、私たちの健康寿命を延ばすことが大切になってきています。栄養は、この健康寿命を延ばすために重要な役割を果たします。特に、タンパク質は身体の健康を維持するのにとても大切です。
※健康寿命とは、病気にならずに健康に生活できる期間のことです。
新しい研究からの発見
米国タフツ大学の研究者たちは、中年期に多くのタンパク質を摂取する人は、疾病が少なく健康的に年を重ねる可能性があるということを発見しました。この研究結果は、2024年1月17日に専門誌「The American Journal of Clinical Nutrition」のオンライン版に掲載されています。
研究対象と方法の概要
- 対象: Nurses' Health Study (NHS) コホートの女性参加者
- 年齢範囲: 登録時の年齢が30~55歳
- 初期登録者数: 約12万1,700人の女性
- 最終分析対象者数: ベースライン時に該当疾患のない約4万8,762人
- 調査方法: ベースライン時およびその後2年ごとに追跡調査
- 調査内容:総タンパク質、 動物性タンパク質、 乳製品タンパク質 (動物性タンパク質のサブセット) 植物性タンパク質の摂取量を調査
- 調査結果:ライフスタイル、 人口統計学、 健康状態を調整した多変量ロジスティック 回帰を用いて、 健康的な加齢に関連するタンパク質摂取量のオッズ比 (OR) と95%信頼 区間 (CI) を推定
※「健康的な加齢」 は、 11の主要な 慢性疾患がなく、 精神状態が良好で、 認知機能または身体機能のいずれにも障害がないこ とと定義
主な研究結果
ベースライン時のデータ
平均年齢: 48.6歳
BMI値25以上: 38.6%
現在の喫煙者: 22.9%
既婚者: 88.2%
タンパク質摂取量の平均値の内訳
総たんぱく質の平均摂取量は(摂取エネルギー内の)18.3%、摂取タンパク質の内訳は下記通り。
タンパク質内訳 |
平均摂取量(エネルギー百分率) |
動物性タンパク質(乳製品除く) |
9.7% |
乳製品タンパク質 |
3.6% |
植物性タンパク質 |
4.9% |
健康的な加齢に合致した人数
合致者数: 3,721人 (全体の7.6%)
エネルギー3%増加あたりの健康的な加齢のオッズ比
タンパク質の種類 |
オッズ比 (OR) / 健康的な加齢の確率 |
95%信頼区間 (CI) |
総タンパク質 |
1.05 / 5%増加 |
1.01 - 1.10 |
動物性タンパク質 |
1.07 / 7%増加 |
1.02 - 1.11 |
乳製品タンパク質 |
1.14 / 14%増加 |
1.06 - 1.23 |
植物性タンパク質 |
1.38 / 38%増加 |
1.24 - 1.54 |
タンパク質の摂取は、健康的な加齢のORと有意に関連していた。特に植物性タンパク質の摂取は、関連が強かった。
植物性タンパク質の主な摂取源
パン、野菜、果物、ピザ、シリアル、焼き菓子、マッシュポテト、ナッツ類、豆類、ピーナッツバター、パスタ
【補足】オッズ比(OR)と信頼区間(CI)とは?
オッズ比(OR)とは、ある事象が発生する確率と発生しない確率の比率を表します。信頼区間(CI)は、その数値がどの程度信頼できるかを示す範囲です。
【補足】エネルギーの3%増加あたりというのはどういうこと?
例えば、1日に2000キロカロリーを摂取する人が、総エネルギー摂取量の中でタンパク質から得られるエネルギーを60キロカロリー(3%)増やした場合、その人の「健康的な加齢」の確率はオッズ比1.05に基づいて5%高まることを示しています。これは、タンパク質の摂取量が多いほど、健康的な老化に良い影響を与える可能性があるという研究結果を支持していると言えます。
植物性タンパク質の重要性
この研究では、特に植物性タンパク質の摂取が健康的な加齢に与えるプラスの影響が強調されています。動物性タンパク質や乳製品タンパク質、炭水化物、脂肪を植物性タンパク質に置き換えると、健康的な加齢に有意な正の関連が見られました。これは、私たちの食生活において、植物性タンパク質の重要性を示唆しています。
まとめ
今回の大規模コホート研究によれば、中年期の食事からのタンパク質摂取、特に植物性タンパク質は、健康的な加齢に大きく貢献する可能性があります。この発見は、今後の私たちの食生活において、タンパク質の摂取がより重要になることを示しています。
参考文献: https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(23)66282-3/fulltext