メニュー

パーキンソン病の治療~注意点まで

[2024.10.11]

今回は、パーキンソン病について患者さんやご家族に知っていただきたい情報後編をお伝えします。

 

治療と生活

前回に引き続き、今回はパーキンソン病の治療法や日常生活での注意点、最新の研究動向などについてお話しします。

 

1. パーキンソン病の治療

現在のパーキンソン病治療は、主に症状を和らげることを目的としています。残念ながら、病気の進行を完全に止める方法はまだ見つかっていませんが、適切な治療により症状をコントロールし、生活の質を保つことができます。

薬物療法

薬物療法は、パーキンソン病治療の中心です。主な薬剤には以下のようなものがあります。

  • レボドパ:最も効果的な薬剤で、脳内でドーパミンに変換されます。
  • ドーパミンアゴニスト:ドーパミンの働きを模倣します。
  • MAO-B阻害薬:脳内のドーパミン分解を抑えます。
  • COMT阻害薬:レボドパの効果を持続させます。
  • アマンタジン:ジスキネジア(不随意運動)の治療に使用されます。

これらの薬剤は、単独または組み合わせて使用されます。症状や年齢、病気の進行度に応じて、最適な薬の選択と調整を行います。また、進行したパーキンソン病のケースでは、レボドパを腸に直接届けるポンプを使ったり、アポモルフィンを皮下注射したり、レボドパを皮下ポンプで送る方法も使われています。

 

手術療法

薬物療法だけでは症状のコントロールが難しい場合、手術療法が検討されることがあります。

  • 脳深部刺激療法(DBS):脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで症状を改善します。

 

リハビリテーション

薬物療法や手術療法と並行して、以下のようなリハビリテーションも重要です。

  • 理学療法:歩行やバランスの改善を目指します。
  • 作業療法:日常生活動作の維持・改善を図ります。
  • 言語療法:発声や嚥下機能の改善に取り組みます。

 

2. 日常生活での注意点

パーキンソン病と上手く付き合っていくために、以下のような点に注意しましょう。

運動と転倒予防
  • 定期的な運動を心がけましょう。ウォーキングや水中運動、ヨガなどが効果的です。
  • 家庭内の転倒リスクを減らすため、つまずきやすい物を片付け、必要に応じて手すりを設置しましょう。

 

食事と栄養
  • バランスの取れた食事を心がけましょう。
  • 便秘予防のため、十分な水分と食物繊維を摂取しましょう。
  • タンパク質の摂取タイミングに注意が必要な場合があります(レボドパの吸収に影響するため)。

 

睡眠
  • 規則正しい睡眠習慣を保ちましょう。
  • 睡眠障害がある場合は医師に相談しましょう。

 

ストレス管理
  • ストレスは症状を悪化させることがあるため、リラックス法を身につけましょう。
  • 趣味や社会活動を続けることも大切です。

 

服薬管理
  • 処方された薬を決められた時間に正しく服用しましょう。
  • 副作用や効果の変化があれば、必ず医師に相談してください。

 

3. 病気の進行と予後

パーキンソン病の進行速度は個人差が大きく、一概に言えませんが、一般的にゆっくりとした進行を示します。

  • 初期:薬物療法が効果的で、症状をうまくコントロールできることが多いです。
  • 中期:薬の効果の変動(wearing-off現象)や不随意運動(ジスキネジア)が現れることがあります。
  • 後期:歩行困難や転倒リスクが高まり、認知機能の低下も現れることがあります。

適切な治療とケアにより、多くの患者さんが長年にわたって良好な生活の質を維持できます。

 

4. 最新の研究動向

パーキンソン病の根本的な治療法を目指して、さまざまな研究が進められています。

  • 遺伝子治療:特定の遺伝子を導入して、ドーパミン産生を促す研究が行われています。
  • 幹細胞治療:ドーパミン産生細胞を作り出し、移植する方法が研究されています。
  • 免疫療法:異常なタンパク質の蓄積を防ぐ方法が探索されています。
  • 早期診断:血液や脳脊髄液中のバイオマーカーを用いた早期診断法の開発が進められています。
  • 新薬開発:より効果的で副作用の少ない薬剤の開発が続けられています。

 

5. 患者さんとご家族へのサポート

パーキンソン病と向き合うには、医療面だけでなく心理的・社会的なサポートも重要です。

  • 患者会や支援グループへの参加
  • 家族や介護者のための教育プログラム
  • 社会福祉サービスの利用(介護保険など)
  • 必要に応じて心理カウンセリング

 

まとめ

パーキンソン病の治療は、薬物療法を中心に、手術療法やリハビリテーションを組み合わせて行います。日常生活では、運動、食事、睡眠などに注意を払うことが大切です。病気の進行は個人差が大きいですが、適切な治療とケアにより、長期にわたって良好な生活の質を維持できる可能性があります。最新の研究では、遺伝子治療や幹細胞治療など、新たな治療法の開発が進められています。パーキンソン病と向き合うには、医療面だけでなく、心理的・社会的なサポートも重要です。不安なことや困っていることがあれば、遠慮なく主治医や専門家に相談してください。

これからも、よりよい治療法や支援方法の開発が進むことが期待されます。一緒に希望を持って、この病気と向き合っていきましょう。

 

お問い合わせ

プログラム内容などリハビリテーションに関することは以下のフォームへお問合せ下さい。
 リハビリテーションについてのお問い合わせ
 メイトウホスピタルでのパーキンソン病のリハビリプログラム

また入院についてのご相談は以下のフォームへお問合せ下さい。
 入院についてのお問い合わせ

※業務の都合上、即時対応が難しい場合がございます。予めご了承下さい。

 愛知医科大学 パーキンソン病総合治療センター 

 

【参考文献】

  1. Blauwendraat C, Nalls MA, Singleton AB. The genetic architecture of Parkinson’s disease. Lancet Neurol 2020;19:170-8.** - パーキンソン病の遺伝的構造に関する研究。
  2. Tanner CM, Kamel F, Ross GW, et al. Rotenone, paraquat, and Parkinson’s disease. Environ Health Perspect 2011;119:866-72.** - 環境要因とパーキンソン病の関連性。
  3. Panicker N, Ge P, Dawson VL, Dawson TM. The cell biology of Parkinson’s disease. J Cell Biol 2021;220(4):e202012095.** - パーキンソン病の細胞生物学的側面。
  4. Olanow CW, Rascol O, Hauser R, et al. A double-blind, delayed-start trial of rasagiline in Parkinson’s disease. N Engl J Med 2009;361:1268-78.** - ラサギリンの臨床試験に関する研究。
  5. McFarthing K, Buff S, Rafaloff G, et al. Parkinson’s disease drug therapies in the clinical trial pipeline: 2023 update. J Parkinsons Dis 2023;13:427-39.** - パーキンソン病の新しい治療薬に関する最新情報。
  6. Pirker W, Katzenschlager R, Hallett M, Poewe W. Pharmacological treatment of tremor in Parkinson’s disease revisited. J Parkinsons Dis 2023;13:127-44.** - パーキンソン病における震えの薬物療法に関する再評価。
  7. Deuschl G, Antonini A, Costa J, et al. European Academy of Neurology/Movement Disorder Society-European Section guideline on the treatment of Parkinson’s
  8. I. Invasive therapies. Mov Disord 2022; 37: 1360-74.** - パーキンソン病の侵襲的治療に関するガイドライン。
  9. Cubo E, Delgado-López PD. Telemedicine in the management of Parkinson’s disease: achievements, challenges, and future perspectives. Brain Sci 2022;12:1735.** - パーキンソン病の遠隔医療の現状と将来展望に関する文献。

前回の記事ではパーキンソン病の症状~診断方法までについてお届けしました。ご質問やご不明な点がありましたら、遠慮なくお尋ねください。

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME