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高血圧症と薬物療法 その2

[2023.12.15]

健康を維持するためには、日々の生活習慣だけでなく、医師から処方された薬の正しい理解と管理が不可欠です。本記事では、一般的な薬の服用に関する注意点から、高血圧症治療薬に特有の注意事項まで詳しく解説しています。高血圧症の治療においては、様々な種類の薬が存在し、それぞれに適切な服用方法があることから、クローズアップして詳細に記述しています。

処方薬の服用における一般的な注意点

薬を服用する前に、現在の健康状態や他の症状について医師に伝えることが重要です。特に、腎機能や肝機能に問題がある場合、薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。その他、患者様から多く寄せられる質問に関して一般的なご回答を下記に載せています。


アルコールと処方薬との組み合わせ時の影響

アルコールと処方薬の組み合わせによる影響は、薬の種類や個人差によって異なりますが、主なリスクは以下の通りです。
・薬の効果の変化:アルコールは一部の薬剤と反応し、効果を強化または弱化させることがあります。
副作用の増加:眠気やめまいなど、薬の副作用がアルコールによって強まる可能性があります。
肝臓への負担増:薬とアルコールは肝臓で代謝されるため、同時摂取は肝機能障害のリスクを高めます。
治療効果の低下:アルコールが薬の吸収や代謝に影響し、治療効果が低下することがあります。
血圧への影響:特に高血圧治療薬との組み合わせでは、アルコールは血圧変動のリスクを高めます。多くの場合、薬の服用2時間前後はアルコールを避けることが推奨されます。

これらのポイントを踏まえ、処方薬を服用している場合のアルコール摂取については、医師や薬剤師に相談することが重要です。

アルコール以外の飲み物との組み合わせの影響

アルコール以外の飲み物と処方薬の組み合わせは、一般的にアルコールほどのリスクは伴いませんが、いくつかの重要な相互作用が存在します。例えば、カフェインは一部の薬剤の効果を増強し、不安感や心拍数の増加などの副作用を引き起こすことがあります。また、ミルクや乳製品は、一部の抗生物質や鉄剤とカルシウムが結合し、薬の吸収を妨げることがあります。
薬を服用する際の、最も安全な飲み物は水です。薬を服用する際には、普通の水を使用するのが一番です。

飲み忘れた場合の対処法

処方薬を飲み忘れた場合の対処法は、その薬の種類や処方されている用途によって異なりますが、最も重要なことは、特定の薬についての指示は医師や薬剤師の指示に従うことです。 下記に一般的な対処法を示します。

・飲み忘れに気付いたのが次の服用時間に近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、通常の服用スケジュールに従います。次の服用時間までに十分な時間がある場合は、忘れた薬をすぐに服用します。 但し、長期作用型の薬の場合は、一度に多量の薬剤が体内に放出されないように設計されているため、忘れた薬を取り返すために2回分を一度に服用することは推奨されません。
・ 1日3回など服用回数が多い薬の場合は、1回忘れても次の服用時間に合わせて通常通り服用します。

いずれの場合も、過剰摂取による副作用や他のリスクを避けるため2回分を一度に服用するのは避けるべきです。重要なのは、個々の薬に対する具体的な指示は、常に医師や薬剤師のアドバイスに基づいて行うことです。

二重に服用してしまった場合の対処法

処方薬を二重に服用してしまった場合の対処法は、服用した薬の種類や量、個人の健康状態によって異なります。緊急時には速やかに医療機関に連絡することが最も重要です。 医療機関に連絡する際は、落ち着いて、どの薬をどれだけの量服用したかを明確に伝えるとよいでしょう。また、現在の症状を観察し、重篤な副作用の兆候(例:過度の眠気、呼吸困難、意識の混濁など)がある場合は、すぐに救急医療を受診しましょう。自己判断で嘔吐を誘発したり、追加の薬を服用したりすることは避けてください。

二重服用を防ぐためには、薬服用の記録をつける、服用管理アプリを使用するなどの対策を検討する

服薬タイミング

薬の服用タイミングの重要性についても解説します。適切なタイミングで薬を服用することが、その効果を最大限に引き出す鍵となります。

食前/食後:食前30分~1時間前/食後30分以内

食間:食事の2~3時間後、次の食事の30分前

起床時/就寝前:目覚めてすぐ/ベッドに入る前

 

 

  理由 適用例
起床時 一日を通じて薬の効果を維持するため(飲み忘れ防止のために、習慣づける目的もあります) 甲状腺ホルモン薬やステロイド、一部の抗うつ薬
食前
(空腹時)
食事による薬の吸収の影響を避けるため 抗生物質や甲状腺ホルモンなど、食事が吸収に影響する薬
食中
(食事中)
胃への刺激を抑えたり、吸収を助けたりするため 一部の鎮痛剤や骨粗鬆症の薬
食後
(食事直後)
胃酸の増加を緩和する必要がある薬、または胃腸への刺激を軽減し、副作用を減らすため 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
食間
(食事と食事の間)
胃が比較的空である時に最もよく吸収されるため 一部の抗生物質や糖尿病治療薬
就寝前 睡眠中に薬が効くようにして、睡眠中の健康リスクを減らすため 不眠症治療薬や一部の高血圧薬

 

このほかにも食直前や食直後といった細かい分け方もあります。それぞれ理由や目的に沿って処方されるので、薬は用法や容量を守って正しく服用しましょう。

高血圧薬の服用における注意点

高血圧は多くの人々に影響を与える一般的な健康問題であり、適切な薬剤管理も成功の鍵となります。ここでは、高血圧の薬物療法時における重要な考慮事項についてご説明します。

運動との関連性

適度な運動は高血圧を管理するのに効果的ですが、運動する際の薬の影響を理解することも重要です。例えば、β遮断薬を服用している場合、運動の強度を調整する必要があります。高血圧症患者の運動療法はこちらに詳しく書いています。

薬の副作用

薬物治療は多くの病気や症状の管理に役立ちますが、同時に注意が必要な副作用も伴います。代表的な高血圧薬に関して知っておくべきいくつかのポイントを参考にまとめています。詳細は医師にご確認してください。

 

主な薬剤名

代表的な副作用

Ca拮抗薬

ノルバスク、アムロジン、ニフェジピン、ヘルベッサーなど

顔のほてり、むくみ、頭痛、歯肉の腫れ、動悸、便秘 など

ARB

ミカルディス、ディオバン、ブロプレス、ニューロタン、オルメテックなど

軽い動悸、めまい など

ACE阻害剤

セタプリル、ゼストリル、タナトリル、コバシル​​など

空咳、のどの違和感、むくみ など

利尿薬

ナトリックス、アルダクトン、フルイトラン、ラシックス​​など

脱水、低カリウム血症、など

β遮断薬

テノーミン、メインテート、ロプレソール、インデラルなど

脈がおそくなる(徐脈)、手足の冷え、喘息発作 など

ほかの処方薬との影響

高血圧の治療に用いられる薬剤と他の処方薬との間には、予期しない相互作用が生じる可能性があります。医師の指示に従い、薬剤の併用については十分注意しましょう。日常に服用する機会の多い、痛み止め薬(例えばロキソニンなど)との間にも相互作用が発生することがあります。以下に、高血圧治療薬とその相互作用の可能性がある薬剤、およびそれらの影響についての一覧表を示します。

ほかの疾患薬 高血圧薬 相互作用によって及ぼす影響
非ステロイド性抗炎症薬
(ロキソニン・ボルタレン・セレコックス・ブルフェン・イブプロフェンなど)

利尿薬
(フロセミド、アルダクトンなど)

降圧効果減弱作用
ACE阻害薬
(カプトプリル、エナラプリル、イミダプリルなど)
β遮断薬
(ビソプロロールなど)
ARB
(テルミサルタン、アジルサルタンなど)
ヒスタミンH2受容体拮抗薬
(ガスター・シメチジン・ファモチジンなど)
Ca拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)
降圧増強作用
ジゴキシン
(ジゴシンなど)
Ca拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)
ジゴキシン血中濃度上昇作用
リファンピシン
(リファジンなど)
Ca拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)
降圧効果減弱作用
フェノバルビタール
(フェノバールなど)
Ca拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)
カルバマゼピン
(テグレトールなど)
Ca拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)

 

代表的な高血圧薬の分類表

高血圧は世界的な健康問題であり、適切な治療が必要です。ここに示されているのは、高血圧の治療に使用される薬剤の一部を抜粋したものです。高血圧治療の選択肢を理解する上での参考資料としてご活用ください。ただし、具体的な治療方針や薬剤の選択については、必ず医師の指示に従ってください。

 

注意事項

こちらのページに記載されている薬剤は、主に高血圧の治療に用いられますが、これらがすべて高血圧専用の薬剤であるわけではありません。同じ薬剤が他の健康状態や病状の治療にも用いられることがあります。

 

さいごに

健康は一日にして成らず。日々の小さな積み重ねが大きな差となります。メイトウホスピタル循環器内科では専門医が健康アドバイスを行っています。


メイトウホスピタル 循環器内科 加藤公彦
(毎週火曜日・水曜日外来担当)

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参考ページ

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高血圧と運動療法
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