パーキンソン病患者体験談〜若年性パーキンソン病発症から現在に至るまで〜
前回の記事ではパーキンソン病との違いに注意!パーキンソン病類似疾患:パーキンソン症候群とレビー小体認知症について解説しました。この記事では「若年性パーキンソン病を発症した患者さん(40代男性)の発症前から現在に至るまでの体験談」についてイラストを交えてご説明しています。
若年性パーキンソン病 体験談 (40代男性)
診断経緯
2014年にパーキンソン病との診断を受けましたが、思えばその2-3年前から、極度の疲労感や右手が震えるといった兆候は出ていました。当時は仕事が忙しかったので、それが原因かなと思いあまり気にかけませんでした。しかし余りに疲労感が抜けないためおかしいなと思い近所の病院に行った所パーキンソン病を疑われ、紹介を受けた大学病院でパーキンソン病に間違い無いと言われました。
パーキンソン病と言われた時は、聞いたことのある病名だなあと感じた程度で実感はありませんでした。インターネットで調べてみると、体を動かすのに必要なドーパミンという体内物質が十分に出なくなる結果、体が思うように動かなくなり筋肉が徐々に固まっていく疾患だと分かりました。手の震えや疲労感が初期症状としてよく見られるものであることもわかり腑に落ちました。
医師からは、薬によりドーパミンを補充すること、及び体を動かすことで筋肉が固まるのを防ぐことが重要と言われました。日々薬を欠かさず飲むと共に、なるべく多く歩くなど運動を積極的に行いながら症状をコントロールしています。現在も介護認定を受けることのない軽症の状態を維持しています。
パーキンソン病の特徴は「早期に発見し対処療法を開始することが重要」であるにも拘らず「見つかりづらい疾患である」点にあると思います。
根本的な治療法が未だ見つかっていない疾患である為、薬の服用や運動を早期に開始することで進行をなるべく遅らせることが重要になります。しかし一方で、確実に診断できる検査法が存在しないこと、かつ初期段階で現れる症状が人により異なることから、別の病気と診断され対処が遅れることも多いようです。
私の場合は、たまたま近所の医師がパーキンソン病の知見をお持ちだったこと、また紹介頂いた大学病院がパーキンソン病で実績のある病院であったことが幸いでした。
仕事との両立
医師からは、仕事はこれまで通り続けるように言われていました。通勤で歩くことやPCで指先を動かすこと自体が、筋肉が固まるのを防ぐ運動になる為です。但し同時に、過度な疲労(深夜残業)やストレスがかかることは避けるべきとも言われていました。原因不明な疾患ではあるものの、これらが症状を悪化させると言われています。
会社に伝えるべきか否か、迷いました。伝えると、キャリアアップの阻害になるかもしれない、将来的には職場で厄介者扱いされるかもしれない。しかし一方、私の当時の仕事は深夜残業が発生しがちだったため、このまま仕事を続けると症状が悪化する懸念を感じました。これから数十年に渡りこの疾患と付き合い、家族を養って行かねばならないことを考えると、このまま仕事を続けるのは厳しい。
考えた結果、パーキンソン病と診断されたこと、及び負荷の低いポジションへの異動希望を上司に伝えました。上司が理解のある方で配慮して下さり、職級等を落とさずにリモートワーク可能なポジションに異動させてくれました。この点は会社の状況や上司の考え方によって対応が異なると思います。
当時を振り返って思うのは、会社に伝えるべきか否かは人により大きく異なるということです。具体的な判断基準には大きく2つあるように思います。1つ目は、仕事の内容がデスクワーク中心か、体を使う仕事(外回りの多い営業マン、工場の製造現場など)か。後者であれば、場合によっては危険を伴うケースすら考えられるので、会社に伝えざるを得ないと思います。2点目はどの程度の負荷・ストレスか。もしこれが過度であれば、会社に伝えた方が良いと思います。
私の場合は2点目が問題となり会社に伝えましたが、今考えればそれはたまたま負荷の高い部署にいたからでした。やはり会社に伝えることはリスクを伴います。もし負荷の高くない部署にいれば、伝えずに済んだかもしれないと今では思います。
家族や周囲への伝え方
個人的には、この点が一番の悩みの種でした。まず最初に妻に伝えましたが、極めて不機嫌になり取り合ってもらえず、今でも疾患についての会話は殆ど出来ていません。妻も仕事をしており仕事と育児の両立に苦労していましたが、さらに厄介ごとが増えたという感覚だったのかもしれません。
子供たちには伝えていません。診断が確定した2014年当時は一番上の子も小学生で、伝えてもまだ理解が出来ないと考えたためです。そのうち、毎日数種類の薬を服用していることや右手の震えを見て色々質問して来るようになりましたが、「大人になるとみんな何かしら薬を飲むようになるんだよ」「疲れるとたまにこうなるんだよね」とはぐらかしている状況です。今後どこかのタイミングで、伝えないといけないと思っています。
友人や近所の方には伝えていません。この疾患は遺伝性のものである可能性もあり、その場合子供にとって良くない情報となりえる為です。従い、症状が出やすい場、例えば人前で何かを話さねばならない場やスポーツのお誘いなどはやんわりとお断りするなど心苦しい思いもしています。
パーキンソン病に関する情報収集
パーキンソン病は人によって症状が異なりますしまだ解明されていないことも多いので、必要な情報を得ることは難しいと感じています。特に40歳以下で発症したパーキンソン病を若年性パーキンソン病といいますが、仕事や家庭などこの年代特有の悩みが多い一方で患者数が少ない為情報量は限られます。私の場合、若年性パーキンソン病を発症している知人が見つかり彼の話は大変参考になりましたが、逆に言えばそれ以外で有用な情報は余りありません。若年性のパーキンソン病患者に必要な情報が得られる環境が整って欲しいと思います。
パーキンソン病が疑われる方へのメッセージ
前述の通りこの疾患は、「早期に発見し対処療法を開始することが重要」です。早期に発見できるほど軽い症状の状態から抑え込むことが出来、仕事との両立やQOLの維持がし易くなります。
またパーキンソン病は、次々に新薬が開発されたり、iPS細胞を活用した抜本的治療の研究が進むなど研究が急速に進んでいる分野でもあります。10年後には全く違った治療法が確立されている可能性もあります。とにかく早期に発見し、症状を抑え込み、粘っていれば状況は好転するはずです。
しかし「見つかりづらい疾患」でもあるので、あれっと思ったらまず自分から行動する必要があります。パーキンソン病でよく見られる症状である、手が震える、臭いがしなくなる、つまづいたり転びやすくなる、等が感じられたら病院に行ってみてください。専門知識が必要な領域なのでなるべく大きな病院に行くこと、及び気になれば大学病院を紹介してもらうことをお勧めします。
また次の記事では、パーキンソン病の姿勢改善へのリハビリテーション(前屈み姿勢に対する運動療法)について詳しく解説していきたいと思います。
【診療予約方法】
メイトウホスピタルでは、パーキンソン病のご相談・お問い合わせを受け付けております。以下の画像リンクからご相談いただくことができます。
また、お電話・受付でもご相談いただくことができます。「パーキンソン病診断(治療)を希望」とお伝えください。
電話:052-701-7000(平日9:00~17:30、土曜日9:00~12:30)
詳細はこちらでもご案内させていただいております(パーキンソン病外来開始のお知らせ)。